警察庁が発表した2020年の犯罪情勢統計で、虐待の疑いで警察が児童相談所に通告した子どもの数が前年比8.9%増の10万6,960人で、過去最多となったことがわかりました。
同庁は「新型コロナウイルスの感染拡大の影響は現時点で不明だが、分析する」としています。
児童相談所への通告は、数の多い順に
・子どもに暴言を吐いたり目の前で家族に暴力を振るったりする「心理的虐待」…7万8,355人(73.3%)
・直接の暴力などの「身体的虐待」…1万9,452人(18.2%)
・食事を与えないなど怠慢・拒否(ネグレクト)の「育児放棄」…8,858人(8.3%)
・「性的虐待」…295人(0.3%)
となっています。
現在文京区を管轄している東京都児童相談センターや、文京区の子ども家庭支援センターの対応数(2019年度時点)も、
このように急増している状況です。
昨年からのコロナ禍における文京区の傾向としても、子どもへの暴言や、子どもの目の前で家族が暴力をふるう「面前DV」などの心理的虐待が特に増加しているとのことでした。
昨年、私も身近なところに虐待を受けている子がいることがわかり、対応させていただいたこともありました。
身近なところでこのように追い詰められている子どもが存在しているということを肌で感じているとともに、そのような事例がこれだけの件数存在していることを想像すると、本当に胸が締め付けられる思いです。
文京区は2025年度に傳通院の隣の土地に文京区立の児童相談所を開設する計画で現在準備を進めていますが、先週2月19日(金)に、私も所属している子ども子育て支援調査特別委員会にて、開設に向けた課題について状況報告がありました。
当初の計画では、児童相談所の中に現在の子ども家庭支援センターの機能を移し、両方の機能を一体化した施設にする予定でしたが、相談・対応件数が激増している状況を鑑み、それぞれの機能の役割をより着実に行い、区役所の各部署ともしっかりと連携をしながら児童の支援をしていくために、児童相談所と子ども家庭支援センターの機能を区分する方向へ転換することとなりました。
これまで通り、区役所の中に子ども家庭支援センターを置き、区民にとって相談しやすく、区役所内での連携もしやすい体制を整え、傳通院の隣には児童相談所を置き、より高度で専門性の高い指導や一時保護、他自治体との広域調整などを行うとしています。
私からは、以下のことを区に要望しました。
① 体制強化のため、予定職員数の増員とより一層の職員育成への注力を
助けを必要としている子どもが一層増えている中で、支援を行っている現場は本当に忙しく大変な様子であることを、昨年の東京都児童相談センターの視察でも垣間見ることができました。
子ども本人からすると、助けを求めていても、区や児相は見ず知らずの大人達ばかりで、なかなか心を開くことは難しく、気軽には連絡できないこともあると思います。
子どもとの信頼関係を築いて、子どもがいつでも自分の本音を話せるような関係になるには、やはり経験に基づいた専門的知識・能力は必要不可欠であると思いますし、1人の職員が1人の子どもとしっかり向き合えるよう、職員の数も社会状況の変化に応じて、増やしていかなければならないと思います。
当初の計画の予定数「84人」は、児童相談所機能、子ども家庭支援センター機能を合わせた人数です。
今回は、対応件数の増加に伴い、機能を分割してそれぞれの対応を強化するための方針変更であるため、機能を分割するだけでなく、子どもと直接関わる児童福祉司等の増員もあわせて検討し、より一層職員育成にも注力していただくよう、要望しました。
② 18歳に達し支援が終了する子どもが安心して進学や就職に向かって頑張ることのできる環境を
文科省の発表によると、コロナ禍の2020年、中高生の自殺者数が過去最多の479人にのぼり、動機は数の多い順に、「進路に関する悩み」55人、「学業不振」52人、「親子関係の不和」42人、であることがわかりました。
家庭環境に課題を抱える子どもが、「頼れる大人がそばにいるから大丈夫」という安心感の中で、学業も含むあらゆることに励むことができ、自立に向け伴走していくことのできる環境が必要です。
しかし、児童相談所や子ども家庭支援センターは対象年齢が原則18歳未満で、高校3年生の学年である子どもの進学や就職をきちんと見届けることがないまま、支援が終了してしまいます。
関係機関と密で確実な連携を図り、18歳に達した子どもが安心して進学や就職に向かって頑張ることのできる環境を文京区でも確保していただきたいと思います。
今後も、子どもの最善の利益を守ることができるよう、児童虐待対応について区と協議を続けてまいります。
皆さまの中にも、児童虐待ではないかという状況をご存知の方がいらっしゃいましたら、子ども家庭支援センターへご連絡ください。
子ども家庭支援センター:03-5803-1109